記事 失敗の清算

カッとなって同僚に送ったメール。アンドレアはどうやってその失敗を精算し信頼し合える関係を築いたのか?                                                        

アンドレア・ハウ著
米誌『フォーブス』2012年2月21日

私が失敗をしでかしたのは2〜3週間前のことだ。ここでは仮にランディと呼ぶ一人の同僚に対して、私は好意的とは言えないメールを送ってしまったのだ。新規の顧客からランディについての痛烈な苦情を受けた後のことだ。ランディは私の代理として交渉に当たっていたのだが、彼の立場の明確さが顧客からすれば受け入れ難かったらしい。顧客の次の言葉を聞いて、私は頭に血が上ってしまった。「ランディさんはあなたから、信頼されるビジネスのやり方をもう少し習っておいた方がいいのじゃないですか?」 これをきっかけに私は、自分だったら違う対応をしたのにと、偉そうに思い上がり始めたのだ。

免罪にはならないが、少なくとも共感してもらえるかもしれない背景をここで言っておこう。ランディと仕事をするのはそれが初めてだったが、ランディについてのクレームを耳にしたのは初めてではなかった。また、私は出張で7つの都市を飛び回りながら、連日会議漬けという状態だった。さらに私は、人に代理を勤めてもらうことに慣れておらず、自分で直接コントロールできないという無力感を感じていた(多分私がこの世で一番嫌いな感情だ)。

どんな言い訳があったにせよ、私がとった対処方法から連想されるのは、元メジャーリーガーのミッキー・マントルが人のお手本としての自らの価値について語った言葉だ。彼は「私のようにはなるな」と言った。当時の私は信頼性の守護神として義憤に燃え、独善的になり、「正義は我にあり」と思い込んでいた。「私は自分の顧客を守り通さなければならない!私は信頼の何たるかを世界に示さなければならない!」と。

私には、ランディに電話をするだけの「時間がなかった」ので、その数時間で気持ちを落ち着かせてからランディ宛の厳しいメールを書き、夜9時に送信した。賢明にもそれだけの時間をあけた自分を誇らしく思ったが、実際にはもっと待つべきだった。その翌日に私が味わったのは、渇望に負けてビッグマックを食べてしまった後の気分 ― つまり、食べているときは至福でも30分後には最悪、という気分だった。

自分の対処方法のまずさに気づくまでそれほど時間はかからなかったのに、実際ランディに電話をして謝罪するまでには一ヶ月もかかった。その間、私とランディのやりとりは、そっけない事務的なメールに終始した。私はランディと距離を置き、心のなかで彼を非難し続けていた。「私の苦情に対してお前の方から何か言ってくるべきだろう」と。

最終的に彼と喋ったとき(メールではなく私から電話をした)、私は初めて知った。ランディは自分の行動がこんな騒ぎになったことにとても当惑していたのだ。ランディは代理を勤めた日から数週間、気を滅入らせていた。私の怒りのメールへの対応としてランディは沈黙を選んだが、それは時間が経てば物事は違って見えることがわかっていたからだった。

私の電話に出たランディは思いやりがあって親切だった。この会話で、私はそれまで知らなかったことを知った。ランディは大の女性支持者であり、われわれ女性が自らの価値に値するものが得られないというような状況を、非常に嫌う人だった。仮にあの交渉のときの態度が顧客には頑なに映ったとしても、私のためにそれをしているとランディは感じていたのだ。ランディもまた、明白に、最後まで自分の顧客を―この場合は私だったのだが―守り通す人だった。

依存症克服団体の12ステップ・プログラムでは「埋め合わせする」ことを推奨し、ランドマークでは「完了する」ということを教える。呼び方は違っていても、どちらも、その行動から得られることは非常に大きい。私も自らの間違いを正すたびに、以下のようなことを学び直している。

  • 失敗を清算すると、夜はよく眠れるし、昼間の集中力が増す。
  • 他の人がどんなに「悪い」ことをしたとしても、私がコントロールできるのは私だけである。よい手本になるかならないかを私は選択できる。
  • 関係がこじれそうなときは、直接会話をする方が、メールよりもずっと効果的だ。
  • 失敗は、人間関係に親密さを築くまたとない機会を作り出す。
  • 人との新しい繋がりや機会は、ほとんどいつも、困難な会話を通して生まれる。
  • 私が責任を取ったときには、他の人も大抵責任を取り始める。私が学ぼうとする姿勢のときには、他の人も大抵学ぼうとする。
  • 直ちに行動するのが一番だが、たとえ遅れても行動する方がしないよりも遥かに良い。

失敗を清算するのに必要なのは、維持するのがなかなか難しい資質、すなわち、勇気、謙虚さ、自己認識につきる。人間関係を築くために必要な事柄と、よく似ていないだろうか? 末長く続く関係も、信頼という強固な土台の上に築かれるからだ。

これを学ばせてくれたランディ、本当にありがとう!

 

 
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