起業家カマラ・デヴィ、夢の実現に邁進中
〜カマラさんが創設したスタートアップ、ヴェニカ・ハーバルズ社(インド、ハイデラバード)は、オーガニックのヘアケアやスキンケア製品を製造販売しています。〜
テンジン・ノーゾム 著

カマラ・デヴィ ヴェニカ・ハーバルズ 創業者
夢を追いかけるのに決して遅すぎることはない、とはよく耳にする言葉だが、それを体現している人には滅多に出会えない。
ハイデラバードのカマラ・デヴィは、まさにそれを生きる敏腕実業家だ。ヘアケアブランド「ヴェニカ・ハーバルズ」を創業したカマラは現在62歳。最近では、顧客の悩みや要望を聞いたり、メディアからの「人生後半でD2C* ブランドを立ち上げた動機は?」などの取材に対応している。
* 訳注) D2C (ディレクト・トゥ・コンシューマー)とは、自社で企画・製造した商品を自社チャネルで直接顧客に販売し、顧客体験を一貫してデザインするビジネス。
カマラさんは私の取材に答えて電話の向こうでこう語ってくれた。「なぜその年で?とか、誰のために?と、たくさんの人から聞かれますが、実は自分の夢を追求するためにビジネスを始めたのです」
正確に言うと、カマラさんがヴェニカ・ハーバルズを立ち上げたのは56歳のときだ。このアーユルヴェーダ(インドの伝統的な医学体系)ブランドは、テランガーナ州政府の伝統医療局から認可を受け、防腐剤を使わないオーガニックのヘアケア製品を提供している。
年齢は関係ない
カマラさんは税務官の娘として生まれた。1987年に結婚して医師である夫と共にイランに渡って6年間暮らし、そこでは興味のあった美容に関する研修コースをいろいろと受講した。その後、子どもたちの教育のためにインドに帰国した。
しかし、夫が交通事故で亡くなったことでカマラさんの人生は一転する。家族を養うために、彼女は国営放送局のドゥーダルシャンで、番組司会者と吹き替え声優として働き始め、1990年までテレビドラマや劇場用映画、舞台劇、ドキュメンタリー番組などに出演していた。
1991年にはハイデラバードで出会ったペルシャ人美容専門家から電気脱毛、痩身や髪と肌の高度な美容療法を学んだ。
自分のサロンを立ち上げるだけの自信を得た彼女は、「クブスラート・オビシティ・エレクトロリシス・ビューティ・クリニック(痩身・電気脱毛美容クリニック)」を創設し、1997年にはもう一店舗を開いた。
二人の息子がそれぞれに大企業で良いポストを得て生活が落ち着いた頃、カマラさんは長男が住むカナダを何度か訪れ、改めてアーユルヴェーダをはじめとする様々な美容術の訓練を受けた。彼女の配合や処方はお客様に好評を博していたが、ランドマークフォーラムという個人の成長のためのプログラムを受講したことがきっかけとなり、事業を新たな段階へと発展させる決意を固めた。
現在は元陸軍士官と再婚しているが、彼女は今も亡き夫を悼むために、瞑想と「ジャーナリング」(書く瞑想とも言われる)を実践している。美容クリニックに訪れるお客様が語る恋愛や結婚の悩みも、やがて彼女のノートの中に綴られていく。
2015年にヴェニカ・ハーバルズを創業したとき、カマラさんは女性の自立を支援するために一人でも多くの女性を雇用しようと心に決めていた。
ヴェニカ・ハーバルズの歩み

ヴェニカ・ハーバルズの製品
カマラさんは、初期投資10万インドルピー(約18万円)をかけて10数種類のアーユルヴェーダ製品の開発とマーケティングを行い、その後、150万ルピー(約270万円)を追加投資した。
現在、ヴェニカ・ハーバルズはD2Cブランドとして、ヘアオイル、ヘアパック、ヘナ、ピュア・シカカイ*、ピュア・リータ**、ヘアシャンプー、洗顔料、フェイスパックなど、インド食品安全基準局の認証を受けた幅広い製品を、自社のオンラインショップやアマゾンなどで販売している。
* 訳注) シカカイ(shikakai)(学名:Acacia consinna)は「サポニン」という成分が多く含まれる天然の実で,南インドを中心に髪や身体の洗浄に使用された。
**訳注) リータ(reetha)(日本名 ムクロジ(無患子)、学名 Sapindus mukorossi)はムクロジ科ムクロジ属の落葉高木。果実はソープナッツと呼ばれ、インドでは髪の洗浄や洗濯、貴金属の洗浄に使われた。
年間売上は、現在150万ルピー。カマラさんは、銀行から約70万ルピーの運転資金を借り入れ、今では10人から12人の従業員を雇用している。
コロナ禍はビジネスにとって厳しい時期だったが、免疫力を高める有機ウコンなどの人気商品が、事業をなんとか持ちこたえさせた。
意欲的な彼女は、販路拡大や様々な市場への出品によって、2022年の年間売上は500万ルピーに上ると見込んでいる。拡張のため、自宅で行っていた製造工程を外部に移設することを考えているが、資金調達が非常に大きな課題だと語っている。
*なお、本事業は「Her&Now」プロジェクトの支援を受けている。「Her&Now」プロジェクトは、女性起業家を支援するための取り組みとして、ドイツ経済協力開発省(BMZ)の委託を受け、ドイツ国際協力公社(GIZ)がインドの技能開発・起業促進省(MSDE)と連携して実施されたもの。
*Landmark Making a difference around the world URL(英語):
https://www.landmarkforumnews.com/never-too-late-to-start-an-entrepreneurial-journey/
*YourStory.com (英語)
https://yourstory.com/herstory/2021/08/meet-komala-devi-62-year-old-venica-herbals?utm_pageloadtype=scroll