ゴシップの5つの隠れた効用

ゴシップは社会の大敵?ゴシップについての最近の研究成果を紹介しながら有益なゴシップについて考える。

ゴシップの5つの隠れた効用

ファスト・カンパニー(2015年2月1日付)掲載*
ステファニー・ヴォッザ著

[*訳注 ファスト・カンパニーは1995年創刊の米国のビジネス誌。先端テクノロジーやリーダーシップ、新しいビジネスモデルにフォーカスを当てた記事を多く掲載している。]

他人についてあれこれ話していると、自分の生活や仕事上の問題点が明らかになってくることがある。それなのに、なぜゴシップは「悪いこと」になっているのだろうか?

私たちは、ゴシップは良くないことだと教わってきた。アメリカの第二次世界大戦時のポスターでは「口が緩むと船が沈む」(口は災いの元)と警告されているほどだ。しかし、人間関係を研究する専門家の推算では、日常会話の65%から80%は他人についての話で占められている。

オックスフォード大学のロビン・ダンバー教授は、著書『ことばの起源ーー猿の毛づくろい、人のゴシップ』において、他人の噂や個人的な出来事について話すという行為は、社会の秩序や繋がりを作る上で重要な手段になっている、と述べている。

「明確な理由は分かりませんが、ゴシップはいかがわしいもの、というイメージを持たれるようになりました。しかし、ゴシップという言葉に本来そのような意味はありません」とダンバー教授は説明する。ゴシップは、親しい人たちの間で行われる活動を意味していたに過ぎなかった。

元々の意味に従って使えば、ゴシップには、実はいくつかの効用がある。ここで、ゴシップという活動を再考し、他人についての会話が有益なものになり得る5つの理由を紹介しよう。

1. ゴシップは、あなた自身の変えるべき点を教えてくれる

「ゴシップは道徳的に問題だと思われがちですが、問題解決のために活用することもできます」と、リーダーシップ・トレーニングを提供するランドマーク社のコミュニケーションの専門家、デボラ・ベロセット氏は言う。「ゴシップは、物事がうまく機能していないことを示す指標となります。自分の口から出てくる言葉に注意を払うことが肝心です」

「このゴシップの下に隠れている不満は何だろう?」と自問してみよう。あなたが怒っているのは、本当は助けを借りたい状況なのに、上司がさらに仕事を与えるからだろうか

何か気に食わないことがあって、それをどうしても同僚や友人に話したいときに、ベロセット氏が勧めるのは、「ゴシップの下に隠れている不満は何だろう?」と自分自身に問いかけてみる、ということだ。例えば、猫の手も借りたい状況であるにも関わらず、上司が仕事をさらに増やしたことに腹を立てているのだろうか。または、もっと一緒に過ごしたいと思っている友人に予定をキャンセルされて機嫌を損ねているのだろうか。「根底にある問題を見つけ出し、適切な人に話しにいきましょう」とベロセット氏は言う。

「世の中で山をも動かすのは、『パワフルな依頼』をする力です。単純な依頼をすることによって、それまでは手の打ちようがないと見えていた問題があまりにも簡単に解決するので驚きますよ」とベロセット氏は続ける。

2. ゴシップは社会を守るのに役立つ

ゴシップを利用して、起こりうるトラブルを周囲に知らせておくと、準備のできていない人が被害に遭う危険を減らすことができる。『サイコロジカル・サイエンス』誌に掲載されたスタンフォード大学の最近の研究によると、ゴシップは犯罪者を排斥する手段にもなるという。この研究の共著者であり、博士研究員のマシュー・ファインバーグ氏は「メンバー同士のゴシップを許している集団では、許されていない集団よりも協力関係を維持したり、身勝手な行動を抑止したりできます」と言う。さらに「ゴシップによって、信用できないメンバーを追い出すことができる集団は、よりうまく機能するようになります。これらの行動は誤用される可能性もありますが、我々の研究結果が示しているのは、ゴシップは集団や社会にとって非常に重要な機能を果たすということです」と述べた。

3. ゴシップはストレスを和らげる

ゴシップのもう一つの効用は不安緩和に役立つことだ。カリフォルニア大学バークレー校の研究者の実験によると、誰かのひどい振る舞いを目撃した被験者は、ストレスを感じ心拍数が増加した。しかし、目撃した内容を他の人に知らせることで、ストレスによる心拍数の増加が抑えられた。

「ひどい振る舞いをした人物の情報を広めることによって、被験者は気持ちが楽になる傾向があり、ゴシップの原動力となっていた緊張や不安も鎮まりました」とロブ・ウィラー氏は言う。彼は社会心理学者であり『ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー』誌に掲載された研究論文の共著者だ。

4. ゴシップは自分の成長に役立つ

ゴシップはネガティブなものだけではない。オランダのフローニンゲン大学の研究チームがポジティブなゴシップとネガティブなゴシップの効果について調査したところ、他人についての良い話を聞くことが自己を向上させる動機になることを発見した。また、ネガティブなゴシップも、どんな行動を控えれば評判を落とさないで済むのかを知るのに役立つ。『パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー・ブレティン』誌に掲載された研究論文の筆頭著者、エレナ・マルティネス氏は次のように言う。「他人についてのゴシップを聞くことは、自分自身を知るための貴重な手がかりになります。私たちは暗黙のうちに、ゴシップの対象になっている人と自分とを比較しますからね」

5. ゴシップは協力と信頼を築く助けとなる

ヴィラノヴァ大学のコミュニケーション・インストラクターであるデレク・アーノルド氏は、「ゴシップは信頼と協力を育むための重要な要素にもなります」と言う。

「プライベートな情報を共有することで関係が構築され、以後、色々と打ち明けられるようになります。そして他の活動でも互いに協力する確率が高くなるのです」と話す。

カリフォルニア大学バークレー校の研究者も同様の結論に至った。つまり、人は、ゴシップを通して他者の行動について学び、その情報を使って、協力者と見込んだ人々と連携を作り出していくというものだ。