同僚を嫌いにならずに仕事する方法

ファーストカンパニー誌(デジタル版)

筆者 ステファニー・ヴォッザ 2018年5月4日

 

仕切りのない「オープンオフィス」で働いていると、何かと問題が生じて厄介なもの。対立を和らげるためのヒントをご紹介しましょう。

オープンオフィスやシェアオフィスなどの空間は、職場にコミュニティ感覚や文化を育むものとされているが、その一方でストレスや口論につながるケースもある。同僚が、あなたとの「境界線」を尊重しない、頼んでも聞いてくれない、といったことは多くの人が経験していることだ。「不満をくすぶらせたり、冷水器のところで発散させるより、互いの意見の相違についてじっくり話し合ってみては?」と、人材教育を担うランドマーク社のコミュニケーションの専門家、ジョスリン・ハーマン=サッチオ氏は提案する。

 

ハーマン=サッチオ氏は続けてこう言う。「人間が集まって仕事をしていると、どうしたっていろいろ気に障ることが起きるものです。そのときに、どこでコミュニケーションがうまくいかなかったのか、どうしたら不一致を解消できるのかが分かれば、職場に健全な人間関係を作り出せるし、生産性を落とさずに済みます」

 

揉め事は未然に防ぐ

オンライン人材紹介のモンスター社のキャリアアドバイザーであるヴィッキー・サレーミ氏はこう言う。「揉め事は、可能な限り未然に防ぎましょう。オープンオフィスにいることを忘れずにね。同僚は、あなたの個人的な電話は聞きたくないし、あなたの温め直したランチの匂いに閉口しているかも。その人にとっては良い匂いではないかも知れません」

 

問題になりそうなことは、事前によく話をしておくことだ。サレーミ氏はこう言う。「例えば、こんなふうに伝えたらどうでしょう。『私は週に2回、手強いクライアントと1時間の電話会議をします。スプレッドシートで作業をしながら話すので、いつもスピーカーフォンにしているのですが、邪魔になりますか?会議室に行った方がいいですか?』相手から言われる前に透明性を保ってあなたの方からコミュニケーションをすると、同僚たちは、この仕切りのない空間であなたと働くということがどういうことなのかを理解し、自分の事情も率先して話してくれるようになります」

 

「一緒に働いている人たちのことを知るための時間を取るのも効果的です」と人材ソリューションサービスを提供するインスペリティ社の上級人材スペシャリスト、クリスタル・バーネット氏は付け加える。「始業後しばらくは静かな時間を持ちたい人もいます。重要なメールに返信したり、その日のスケジュールを立てるためです。そのような好みに配慮して午前中は邪魔をしないようにするのも、互いにとって有益な仕事環境と言えるでしょう」

 

不協和音が生じたら?…話し合うのみ!

残念ながら、不一致が生じるのは避けられない。バーネット氏は「不一致はあるのが当たり前。従業員同士が敬意とプロ意識をもち、対立する立場や意見を話し合っていくことでそれは建設的な機会になります」と言う。「当事者たちは、相違点の解消のために、可能な限り冷静かつ友好的に会話を進めるべきです」

 

なぜ自分は気分を損ねたのか?――それを特定するところから始めよう。ハーマン=サッチオ氏はこう質問する。「何が起きましたか? または何が起きなかったのですか? それは気持ちのことですか、それとも具体的で行動に移せることですか?」

 

気分を害した原因が一旦明確になったら、自分が期待していることを相手に明確に伝えていなかったのではないか、という点を検討する。そして誰か他の人に相談する必要があるかどうかも。サレーミ氏の提案は、あなたの方から同僚に打診して状況をつぶさに振り返ってみること、そして、実際に起きたことや、どんな異なる対応が可能だったかを話し合うことだ。

 

「一番大事なのは、今後の対処法について話し合うことです。常にプロ意識を持ち、相手の視点から物事を見るように努め、かつ、あなたの視点を相手に明らかにすることが重要です。相手があなたの視点から物事を見られるかどうかは、あなたにコントロールできることではありません」

 

「悪者探し」はしない

事態が悪化したときに、悪者探しをしたくなる誘惑に負けないこと。ハーマン=サッチオ氏はこう語る。「自分が責任者になりたくないので、私たちは何かのせいにするのです。何かが悪いから、としておく方が楽、なぜなら自分は何もしなくてよいから、という訳です。悪者探しは、レベルの低い、子供じみた方策です」

 

物事が自分の期待していた通りに進まなかったときにどう反応するか、どうコミュニケーションするか? その責任者はあなたなのだ。「あなた自身の言動が困惑や対立を引き起こしたかも知れないことを認め、そして、それをどのようにしたら修復できるかを相手に尋ねてみて下さい」とハーマン=サッチオ氏。

 

氏は続ける。「『あなたが…』という言葉で話し始めるのは極力減らしましょう」

 

自分が責められている、と思い込まない

自分中心に物事を考えているときにもコミュニケーションの行き違いが生じる。ハーマン=サッチオ氏曰く、「子供の頃は、自分を中心に世界が回っています。そして私たちは、そこからまったく成長していないのです。例えばあなたのメールに5時間後に返事が来たとします。あなたは、自分は避けられたと思うかもしれませんが、たぶん、あなたとは全く関係のない事情でしょう」

 

むしろ、物事を自分中心に捉えない練習をしよう。ハーマン=サッチオ氏によれば、「自分個人の中で生きて物事を決めつけていくよりも、相手に質問して見つけ出しましょう。他の人が内面でどんな経験をしているかは、私たちには知りようがありません。その人がなぜ機嫌が悪いか、困惑しているかを伝えてくれるかどうかは、その人次第ですから」

 

次の二つの質問をして、相手が自分の視点を分かち合える機会を提供しよう。「何か言っておく必要のあることはありますか?」「ことが思うように進まなくて焦っているというようなことはありませんか?」それが対話を開始させてくれるのだ。

 

根に持たないこと

コミュニケーションすると対立が生まれるかも知れないので黙っておく、ということを人はよくするが、ハーマン=サッチオ氏は、正にそれを話すことほど大切なことはないと言う。「どんな人間関係でも、コミュニケーションを避けていると関係は悪化する一方です。恨みや不満は私たちの物の見方を変えていきます。でも、コミュニケーションによって解決できないことは何一つありません」

 

いつもコミュニケーションの「回線」を開いておこう。自分が感じていることを隠すより、むしろ他者に対して正直であれ。ハーマン=サッチオ氏は言う。「欲しい結果が得られていないなら、あなたが何を期待しているかを人と分かち合って表に出しておきましょう。今オープンにしておく方が、後から嫌な思いをするよりも良いでしょう」