アラン・ロウ 子どもたちの可能性のために 揺るぎないコミットメントに立つ

コミットするまでは、ためらいがあり、引き返すチャンスがある。主体的な行動(そして創作行為)に関しては、ひとつの基本的真理がある。それを知らないと無数のアイデアや素晴らしい計画を絶命させることになる。その真理とは「人が固くコミットした瞬間に、神の意志もまた動く」というものだ。

                            – ウィリアム・H・マレー (1913〜1996年 スコットランドの登山家)

宿題をする子どもたち(リベリア共和国グランドバッサ郡ブキャナン)

これは、コミットメントについての物語である。挫折とブレークスルー、そして同意が無い中ですら自分の言葉に忠実である、ということの物語だ。だからこそ、語る価値のある物語だ。

 

まず、このプロジェクトについて

「子どもたちに支援のハグを!(Helping Hugs for Children)」は、ランドマークの卒業生、アラン・ロウ氏が設立した、公益を目的とする非営利団体(501c3団体)だ。この団体は、「元子ども兵士の成長を支える会(the Development of Former Child Soldiers (IDEFOCS))」の発案に共鳴し、リベリアの元子ども兵士を支援するための募金活動を行っている。その結果、2018年には、リベリア共和国グランドバッサ郡ブキャナンに住む400人以上の子どもたちが、生まれて初めてのクリスマスを祝い、音楽やゲームやプレゼント、それに食事などを楽しんだ。今年(2019年)は、500人以上の子どもを招待することを目標に、募金活動を続けている。

 

2018年のクリスマスパーティの様子(リベリア共和国グランドバッサ郡ブキャナン)

 

リベリアを対象にした理由

アランは、後に非営利団体へと発展する自身のプロジェクトを説明しながら、リベリアとつながりができたきっかけを教えてくれた。「アメリカ国内には豊富な資源がありますが、他国はそういう資源にアクセスすることができません。アメリカに住み、援助が可能な私たちが手を差し伸べなければ、一体誰がそれをやると言うのでしょうか」アランのプロジェクトパートナーは、「元子ども兵士の成長を支える会」の創設者であるモリス・マタディ氏だ。モリスは、リベリア人で、元少年兵だ。リベリアで内戦が勃発したとき、彼はわずか8歳だった。

 

「モリスの父親は、当時すでに退役していましたが、内戦前までは政府軍の兵士でした。一家で検問所に向かう途中で、何の奇跡か、モリスだけが家族と別々にされました。そして、モリス以外の家族が検問所に到着したときに父親が軍人だったことがばれて、彼以外の家族全員が殺されました。これが、モリスに起きたことです。その後、彼は少年兵となって生き延びました」

 

「元少年兵の成長を支える会(IDEFOCS)」の創設者、モリス・マタディ氏。社会起業家を支援する組織である、「アンチャーテッド(Uncharted)」によるイベント「アンリーズナブル・クライマックス」にて、プレゼンテーションを行なっている。(2011年)

 

「反政府軍の兵士たちは、あちこちで  住民を殺害し、子どもたちを連れ去って子ども兵士にするのです。子どもたちは麻薬中毒にされ、兵士や指揮官が命じたことを何でもやるようにされます。モリスはそれを生き延び、脱出に成功しました。モリスの現在の目標は、こうした罠にはめられている6万人以上の子どもを救うことです」

 

2018年のクリスマスパーティに集まった子どもたち

 

モリスの話に感動し奮起したアランは、自身の非営利団体と、リベリアにあるモリスの団体を連携させたいと考えた。「もともと、子どもたちのための非営利団体を始めたくて、『子どもたちへ支援のハグを!』という名称にして認可を受けたのですが、しばらくは何も活動しませんでした。ところが去年、モリスと出会ったことをきっかけに、400人の子どもたちのためにクリスマスパーティを開催することができました。本当に良いパーティでしたよ」

 

アランには、リベリアの元子ども兵士のような、恵まれない子どもたちを援助することが自分のライフワークだということに疑いがなかった。「関わった人たちから反応が返って来ればくるほど、自分の方の精神的つながりもどんどん強くなりますよね。私は、フルタイムで仕事をするなら、非営利団体を運営したいと考えました。人を助けたいというのが、本当に私の心の底からの願いだからです。すると、それが現実になっていくのです」

 

アラン・ロウ氏。ランドマークの卒業生であり、「子どもたちへ支援のハグを!」の創設者。

 

可能性を創作する…そして危機に直面!

「子どもたちへ支援のハグを!」は、アランが地元テキサス州ヒューストンで、ランドマークの「自己表現とリーダーシッププログラム(SELP)」に参加したときに創作したプロジェクトだ。「このプロジェクトは、簡単に進むだろうと思っていました(笑)。子どもたちを救うための非営利団体を始めたかったのです。ところが、役所絡みになると、物事は必ずしも簡単には進まないということを、当時は知る由もありませんでした」

 

アランは、知人から度々ランドマークフォーラム(ランドマークの基本コース)のことを聞き、ランドマークの説明会に行くことにした。「ランドマークフォーラムがビジネスを発展させられる、と見えたので、私は申し込むことにしました。その後、ランドマークのすべてのプログラムに参加しました。ランドマークフォーラムは、私のビジネスを発展させるどころか、私の人生までも変えてくれたのです」

 

アランがプロジェクトについて話すのを聞いていると、アランにとっての最大の変化は、「自分の言葉を尊ぶ」と「インテグリティを高める」という領域で起きたことは明らかだ。

 

「ランドマークで学んだことのひとつですが、もし私たちがなりたい自分になっていないとしたら、今実際に自分がいるところに辿り着いているのは、これまでの自分という人がどうであったか、そして自分が下した決断がどうであったか、の結果だ、ということです。だから、今いる場所を変えたいなら、今自分がどんな人になっているのか、なぜ今このような決断するのか、を見てみることが必要になります」

 

「子どもたちへ支援のハグを!」の理事会メンバー、マリリン・ベイリー氏(左)と、ランディ・スピア氏。

 

「子どもたちへ支援のハグを!」には、アランの他に、重要な2人のパートナーがアメリカにいる。役員を務めるマリリン・ベイリー氏とランディ・スピア氏だ。アランはこの3人でこれまでに達成してきたことに満足していたが、同時に、この非営利団体の次なる拡大を3人が熱望していることにも気づいていた。これまで自分が遭遇した挫折について、彼は次のように語った。

 

「プロジェクトに取り組み始めた頃は、法的な手続きを済ませ非営利団体の認可を得ることが最も困難だろうと考えていました。しかし実際に認可を受けて分かったのは、最難関は、私の期待するようなインテグリティを多くの人が持っていないことでした。つまり、多くの人は——私も以前は同じでしたが、——援助を必要とする人たちに対してなかなか『できない』と言えないのです。その結果、無理な約束をしてしまい、そして、やると言ったことを全部実行することができません。そして、自分もそうだったということを、私は忘れてはならないと思っています」

 

とはいえ、これは、アランが諦めてしまったという意味ではない。アランは、今直面している問題に、そして明確になってきた自分の力量に向き合っているのだ。「自分がやろうとしていることに対して人の共感や協力を得るということが、私にとっては多分一番難しいことです。今でもそれが一番難しいと感じますが、以前に比べればずいぶん上手になりました。挑戦すればするほど上達していくのでしょう」

2018年のクリスマスパーティで食事を楽しむ子どもたち。

 

「依頼をしなければ、答えはいつも『ノー』だ」

アランは言う。「私は、常に私たちの活動に興味を持ってくれそうな人を探しているのに、ランドマークの中では誰にも声をかけませんでした(笑)。これは私の失敗ですね」

アランは、依頼をする、ということとの関わり方をトランスフォームして成果を作り出した。

「ここ数か月の間は非常に順調で、過去の実績を大きく上回ることができました。その結果、『元子ども兵士の成長を支える会』に夢を実現していただくことができたのです。リベリアで行き詰まっていたすべての子どもたちに、様々な可能性が存在し、その可能性が実現される、ということを実際に見てもらえました」

 

アランは「子どもたちへ支援のハグを!」の活動の、今後の発展に胸を躍らせている。「価値あることをやろうと思えば、何であれ簡単ではありません。大事なのは粘り強さで す」 ランドマークについてアランはこう付け加える。「この7年半に私が遂げた、人間としての成長の始まりは、間違いなくランドマークでした。どうやら、良い影響だったようですね!」

 

「本当にコミットしなければ決して起きることのなかったあらゆることが、その人を助けるために動き出す。決断したことによって、様々な出来事が連続した大きなうねりとなって生み出され、予期しなかったあらゆる出来事や出会いや物質的援助が、その人の望む通りに育まれ、夢にも思わなかったことが手に入るだろう。できること、あるいはできるようになりたいと夢見ていることがあれば、何でも実行しなさい。大胆さは、非凡な才能やパワーや魔法を内包しているのだ。今すぐ始めなさい」 

                                                      – ウィリアム・H・マレー