ウルリッチ・フロレスカ 「実際に在ること」に向き合いながら進めるゼロデブリのビーチクリーン作戦

「正式の決定が出ました。(3月イベントは)中止です。でも僕がやったのは海岸に行くこと。非公式の正式行事です。テントもなければ設営もなく、ただ僕が僕としてやるだけ。たった一人でも構わない。僕は、自分がすると言ったことをするために来た。僕はまさに自分の言葉の中に立っていました」

ウルリッチ・フロレスカ 「ゼロデブリ」(ゴミゼロ)共同設立者兼CEO

私たち、ランドマークフォーラムニュースのコミットメントは、世界中のランドマーク卒業生たちが「実際に在ること」と向き合いながら並外れた可能性を創作している、その心打たれるストーリーを共有することだ。そのような卒業生の一人が、カリフォルニア州を拠点とするNPO「ゼロデブリ」の共同設立者兼CEOを務めるウルリッチ・フロレスカだ。このNPOのミッションは「外海、内海、湖など、生き物が生息する全水域の水辺から、あらゆる生命体に悪影響を与えるポイ捨てごみや漂着ごみを取り除くことごみのないきれいな水辺がどんなことが可能にするのか、また、人間や人間と共存し私たちの命を支えている海洋生物にどのような恩恵を与えるかについて、世界中の人々の心に触れ、感動させ、インスパイアさせること」だ。このNPOは「あらゆる形態の汚染物質を水辺から取り除くまで」、自分たちのミッションを続けると誓っているーーつまり「ゼロデブリ」(ゴミゼロ)になるまで。

「ゼロデブリ」の共同設立者兼CEOのウルリッチ・フロレスカ
2019年4月のビーチクリーンイベントで拾った意外な物を見せてくれる

「ゼロデブリ」どんなふうに始まったか

NPOゼロデブリは2018年1月に活動を開始したが、そのきっかけはあるひとつの会話だった。2017年、48歳の誕生日を迎えるにあたり、ウルリッチは何か特別なことをしたいと願いつつも具体的に何をするかが不明確だった。そこでソーシャルメディアのコミュニティに投稿してみた。「この世界の中に、愛と親切心から48の行動を起こしたい人、いる?」と。

やあ、みんな!

僕はこの12月xx日で48歳になる。

ひとつプロジェクトがあるんだ。

非凡なコミュニティからの並外れたプロジェクトさ!

プロジェクトの名前は以下のとおり。

 

「愛と親切からの48の人道的な行動」

「この投稿で『いいね!』をたくさん貰ったけれど、具体的なアイデアは一つも出てこなかったのです」とウルリッチは笑いながら言う。「僕は何かドでかい英雄的なことを求めていました。ほら、『俺はコレコレを征服したぞ!』みたいなことね。しかし、ありきたりなことの中に、きらりと光るアイデアが出てきたのです。それが『ゼロデブリ』(ゴミゼロ)でした」

ビーチに出かけて清掃するというアイデアは、ランドマークの卒業生と話している中で生まれた。ウルリッチが12月の誕生日にカリフォルニアの海岸で一緒にごみ拾いをやらないかと呼びかけたら、後にゼロデブリの共同設立者兼代表理事となる親しい友人のハミッド・ペゼシュキアンがすぐさま手を挙げた。

ハミッド・ペゼシュキアン 「ゼロデブリ」の共同設立者兼代表理事

「ハミッドから『その話、乗った!やってみたい』と返事が来ました」とウルリッチは思い出す。「それで二人で海岸に行って空き瓶を拾っていたら、ハミッドが『みんなを呼ぼうよ。たくさんの人にこの可能性を伝えようよ!』と言い出したのです」。このようにして「ゼロデブリ」は生まれたのだ。

誕生日の遠足から、大陸横断チーム活動へ

誕生日のアイデアの海岸へ遠足が公式のNPO設立へと移行するのにどのくらい時間がかかったかと尋ねると、ウルリッチは笑って「ものの一週間ですよ」と答えた。そして設立までの過程をもう少し詳しく話してくれた。「最初に集まったのは12月16日。その時は僕とハミッドだけでした。二人でビーチの空き瓶を拾っただけ。その翌日にはロサンゼルス郡のNPO法人として正式に登録しました。そして2018年1月24日に、NPOになっての最初の月がスタートしました」

イベントの成功を祝うゼロデブリ・カリフォルニアチーム(2019年6月)

テント、シャツ、ホームページやSNSのサイトなど、この団体が保有するものはすべて頼もしい協力団体からの寄付や、ウルリッチやチームメイトからの寄付から生み出された。このチームの活動は煎じ詰めればとてもシンプルだ。「僕たちはすると言ったことをしているのです。つまり、自分の時間を月に一回4時間、ビーチをきれいにするために使っています」

ゼロデブリ・カリフォルニアチームの活動の様子

ウルリッチはこれにコミットし、それを毎月・毎年続けた。彼が発見したのは、自分の言葉に忠実であると、見ている人たちが心を動かされて自分もそのゲームに参加しようという気になることが多々ある、ということだ。ゼロデブリの場合は確実にそうだった。

「2019年の2月14日にフィリピンの友人から、『どうしたら私もこの活動ができるのか?』と問い合わせが来たので、『ゼロデブリ・フィリピンとして登録しておくよ』と返事しました。そして登録しました。2019年6月にはメキシコから、2019年10月にはネパールから申し込みがありました。だから今では4か国が参加しています。また今年はウクライナとアフリカのガーナが来るかなと思っています」

クリーンイベント開催を祝うゼロデブリのメンバーたち。(左から、フィリピン、メキシコ、ネパール。)

挫折、突破、そして家族の絆

挫折について尋ねると、ウルリッチは改めて考えるまでもなく即座に答えた。

「挫折なら毎月経験していますよ。僕の「挫折」は、『なぜビーチに行く必要があるの?』『なぜこんなに早起きする必要があるの?』『なぜこれをする必要があるの?』と囁く自分自身の声です。それらが僕の挫折、ブレークダウンです。そしてそれに対するブレークスルー(突破)は、僕が、より力のある人間になったことです。僕は僕が自分の言葉を守れることを知っているからです。雨が降ったって、僕は必ずビーチに行きますよ」

ウルリッチが自分の言葉を守れるのはチームワークのおかげだ。彼は言下に、二人の息子、イーサンとディランが自分の成功の支えになってくれているからだと言い切る。「責任ある人間としての僕を呼び覚ましてくれるのは二人の息子たちです。彼らは、僕がまだ寝ている間にすっかり着替え終わって準備万端なのです」。息子たち二人もランドマークの卒業生だ。ウルリッチはさらにこう言う。「息子たちは、自分が自分の言葉である、奉仕の人である、とはどういうことかを理解しています…奉仕する、世界に還元すると何なのか、それを心で知っているのです」

ゼロデブリの成功の鍵、ウルリッチの二人の息子、ディラン君(左)とイーサン君

ウルリッチは言う。息子たちと一緒にゼロデブリに参加したことが「本当に彼らのことを知る機会となりました…彼ら二人はこの活動を通して、世界が今どうなっているのか、そして自分よりも大きなもののために立場を取れば、世界が人間にとってどんな場所になり得るか、などに気づき始めています。僕はそこに達成を感じています」

 

ゼロデブリとして世界の現実に向き合うとは

ランドマークフォーラムニュースがウルリッチに初めてインタビューをしてからその後のフォローアップの会話までの間に、カリフォルニア州には大きな現実の変化が起きた。州政府と連邦政府による、コロナ禍の社会的距離の勧告に伴い、ウルリッチは、チームとして3月15日に予定していたビーチクリーニングについて、この27か月の活動の中で下したことのない決定を下すことになった。「チーム全体としてのゼロデブリのイベントを中止しました。合意のもとです」

しかしウルリッチは別のことにも気づいた。非常に大きな「現実」を目の前にしてなお、まだ自分の言葉を生きる方法を見つけられるかもしれない、と。

「正式決定が出ました。中止です。でも僕がやったのは海岸に行くこと。非公式の正式行事です。テントもなければ設営もなく、ただ僕が僕としてやるだけ。一人でゴミを拾って清掃する。友人がやってきて『一緒にやってもいい?』と尋ねました。僕は『もちろんさ。でもこれはゼロデブリの活動じゃないのだよ』と答えました。だからあなたの質問への答えは、たった一人でも構わない、です。僕は、自分がすると言ったことをするために来た。僕はまさに自分の言葉の中に立っていました」

巨大な挫折に直面し、ゼロデブリがグループとして集まらないという選択を道徳的、社会的に義務づけられた今のこの現実に向き合いながら、ウルリッチ・フロレスカはビーチに姿を見せ、自分自身と世界に対する自らのコミットメントを貫く。その朝もビーチには、いつもと同じく12.2ポンド(約5.5キログラム)のごみがあった。そしてゼロデブリは、2020年の3月も、再び世界に変化を起こしていた。おめでとう。

ゼロデブリについて詳しく知りたい方は、ここからNPOゼロデブリのオンラインへ。

Zer0 Debrisのホームページ https://zerodebris.com/