人身取引と闘い、サバイバーを支援するNPO “セービング・ジェーン”

キャシーアン・パウエルは2017年まで、ニューヨーク五番街にある高級百貨店バーグドルフ・グッドマンに勤め、優秀なスタッフとしての表彰歴のある有能なショッピングアドバイザーだった。その年の11月にランドマークフォーラムを受講し、数週間後に退職した。快適な暮らしを送ってはいたが、仕事では心が満たされていないということに気づいたからだ。

次に何をするべきかが分からぬままに、キャシーアンはピラティスやヨガを試したり、プロのための調理師学校に入学したりした。1か月後の2017年12月にはランドマークのアドバンスコースに参加し、夫と共にラスベガスに転居した。

1月と2月は、自分の人生にとって意味あることを探し求めて悶々とするうちに過ぎ去った。2月末のある日、 キャシーアンは明け方4時に目が覚めた。彼女はベッドに起き上がり、夫にこう言ったのだ。「私は人身取引からの生還者(サバイバー)を支援するのよ。その団体は『セービング・ジェーン』と呼ばれることになるわ」

「セービング・ジェーン」は2018年4月9日に、人身取引からのサバイバーを力づけるため、そして新たな被害を防止するために設立された。2018年秋セービング・ジェーンは、ニューヨークとラスベガスでのワークショップに連動させて、10歳から14歳までの若者を対象とするマンガ・グラフィックノベルを用いた革新的な予防・啓発プログラムを開始した。子供たちに、人身取引とはどのようなものでそれをどうやって回避するかを教育するプログラムだ。

このグラフィックノベル『奴隷制を廃止せよ! #あの子が消えた』(トーマス・エストラー著)*は、人身取引被害についてのFBIのスペシャリストやその他の専門家たちの助言を受けて制作され、ホームレスになったひとりの少女が、人を食い物にする悪人に強制されて人身取引の犠牲者となっていく経緯が語られている。

*訳注)このグラフィックノベルは下記のアドレスからお読みいただけます。
https://issuu.com/savingjane/docs/_goodgirlgone_issue_edition/38

セービング・ジェーンがいま取り組んでいるのは、このプログラムをスペイン語版に拡張すること、そして、ラスベガスにいる2万人以上のホームレスの子供たちに特化したグラフィックノベルを制作することだ。このワークショップは、国連人身取引に関するワーキンググループや州議会議員たち、全米各地の個人サポーターたちの支援を受けて国内のさまざまな地域に拡大している。

セービング・ジェーンがプログラムを開催する候補地として優先的に選んだのは、テキサス州のヒューストン、ワシントンDC、ジョージア州のアトランタ、フロリダ州のマイアミ、カリフォルニア州のサンディエゴなどの主要都市だ。これらの都市における人身取引の報告率が最も高いからだ。交通の要衝でもあり、多くの大規模イベントが開催されていて、それが、子供たちが搾取されるきっかけとなっているのだ。

セービング・ジェーンは、若者対象の人身取引被害予防プログラムに加えて、警察官や医療の専門家、保育士、接客業などを対象とした職業人のための訓練プログラムや、大学向けの訓練プログラムも開発している。

セービング・ジェーンの第一の使命は、人身取引からの生還者(サバイバー)たちを社会のリーダーへと生まれ変わらせることだ。セービング・ジェーンは、サバイバーたちが日常の社会生活に復帰するためのトラウマの治療や教育・訓練などを提供する回復施設を建設してこのミッションを達成しようとしている。施設内には医師やセラピスト、ソーシャルワーカーがいて、医療サービス、職業訓練、高等教育などを提供し、最終的には専任のランドマークフォーラムリーダーによるサバイバー向けのコーチングまで提供したいという計画だ。

この計画は既に着手されており、回復施設の必要条件を洗い出すためにサバイバーとトラウマ治療の専門家たちが繰り返し円卓会議を行なっている。条件の洗い出しが完了すると、建築家が施設の立体模型を作成し、資金調達プロセスの開始となる。

寄付、その他のご協力、お問い合わせなどは、セービング・ジェーンのWebサイト(https://www.savingjane.org/)、もしくはFacebookページ(https://www.facebook.com/SavingJaneOrg/)をご覧下さい。

セービング・ジェーンでボランティアをしたい方は、volunteer@savingjane.org. までご連絡下さい。もっと責任のある役割についてのお問い合わせは、leadership@savingjane.org. までご連絡下さい。

【翻訳担当チーム(テルク)の付記】
この記事を選んだ理由は、ビングジェン」というこのプロジェクトに参加した子どもがインタビューに答えて、「これで、私も誰かを助けてあげられる。世の中を変えられるんだ」と言うのを聞いたからです。子どもが本来もっているパワーに目覚めていく様子にとても感動しました。人間が持つ本来の力を開花させるという点でビングジェは真の意味でのエンパワメントです。子どもたちが人身取引から身を守れるように、子ども向けの漫画テキストを作成する、生還者(サバイバー)を地域のリーダーとして力づける、などのビングジェらしい独自の活動によって子供たちも行動を起こし始めています。人身取引の撲滅や生還者支援に興味がある方はぜひ上記ウェブサイトをご覧下さい。

※参加した子供たちの様子はこちらの動画でご覧になれます。

https://www.savingjane.org/programs