ザック・シュライエン メンタルヘルスのためのコミュニティ 「18パーセント」を設立

「危機だと思う、ストレスがかかりすぎていると思う、自分に何かが起きているような気がする・・・ そんなとき、NPO「18パーセント」を思い出して欲しい」


ザック・シュライエン、「18パーセント」の共同創設者

ザック・シュライエン氏はランドマークの卒業生であり、メンタルヘルスに特化した、無料のP2P*オンライン・サポート・コミュニティ「18パーセント」の共同創設者だ。彼は2017年に、精神疾患の副作用が、ときとして人の命を奪うこともあると知り、地域のメンタルヘルス運動の資金集めと、自身のオンライン・サポート・コミュニティ「18パーセント」の創設に取り組み始めた。

ピアツーピア 特定のサーバーやクライアントをもたないコンピューターネットワークの環境

始まりは?
「家族ぐるみで親しくしていたルイスという友人がいて・・・」と打ち明けるザック。「僕たちは一緒に育った。ルイスの兄弟もね。ルイスは19歳のとき、双極性障害および統合失調感情障害と診断されたんだ」。ルイスは何度か入退院を繰り返し、病気自体と処方された薬の影響の両方で苦しんだ。彼は3年間の闘病を経て2017年に亡くなった。


ザックの家族ぐるみの友人であり、「18パーセント」創設のきっかけとなったルイス

友人の死に遭遇したザックは、何か自分が助けになれないかと模索し始めた。「僕はまず、ルイスを記念して、募金を募りました。クラウドファンディングを通じてルイスの記念のために4万ドルを集めて、それを、メンタルヘルスの問題を抱える10代の若者とそのご家族の支援のために、全米精神疾患患者家族会(NAMI)に寄付しました。

「僕は合計2つのキャンペーンをやりました。2番目のキャンペーンは特別でした。というのは、低所得地域のためキャンペーンだったからです。所得の低い家庭では、誰かが精神疾患になると本当に大変なのです。ルイスのご両親はカリフォルニア州に住んでいますが、そこから最も近い全米精神疾患患者家族会(NAMI)はNAMIエルドラドでした。僕たちはこの2番目のキャンペーンでさらに3万ドルを集めました」

ザックが実施したこの資金調達キャンペーンは、今後メンタルヘルスの問題に遭遇するかもしれない個人を支援するだけでなく、ルイスの家族に、今メンタルヘルスの難局をくぐりぬけようとしている人たちを支援する機会を与えたのだ。「僕が2つめのキャンペーンを始めたとき、ルイスの父親のフレッドが、NAMIエルドラドでボランティアをやり始めました。フレッドが癒やされていくのが見えて嬉しかった。フレッドは実際、NAMIの理事会メンバーになったのです。素晴らしかったのは、人に貢献することができて、それがフレッド自身の癒しにつながったことでした」


ザック(右)とルイスの両親のフレッドとマリエル

「18パーセント」について
ザックは資金調達の努力が報われたことに喜びながらも、単なる資金集めを超えた貢献ができないものかと、友人や、ビジネスパートナーのデイビッドに相談をしていた。「最初のキャンペーンが終わった後にデイビッドに電話して、他に何ができるかな?と尋ねました」。ザックは当時を振り返ってこう言う。「何かのプログラムを支援するための基金集めは、確かに有益だと思うけれど、僕は、何かそれ以上のことをやりたかったのです。メンタルヘルスの問題を抱えた人々をサポートするための、僕自身のプラットホームのようなものを作りたいと思いました。『18パーセント』はそんなふうにして誕生しました」


デイビットとザックは18パーセントの共同創設者でありビジネスパートナーでもある

ザックは精神疾患についてさらに学び、驚くべき統計を見つけた。2017年時点で、米国では18歳以上の成人のうち推定4660万人が精神疾患を患っているのだ。(米国国立精神衛生研究所調べ)。これは米国の成人人口の18.9%、つまり5人に1人に相当する。






























ザックの「18パーセント」が提供しているチャンネルのスクリーンショット

ディビッドは、スラックというビジネスチャットツールを利用して、大きなオンライン・マーケティング・コミュニティを経営している。彼はザックに提案した。もしかしたら、このスラックというプラットフォームは、ザックが求めている「トランスフォメーションを引き起こすのに理想的な空間」を提供してくれるかもしれないと。二人で会話を続けていくうちに、過去にメンタルヘルスの問題と闘ったことのある、あるいは現在闘っている人々をつなぐ目的に特化して設計されたオンラインコミュニティを作ろう、というアイデアが、ますます理にかなったものに見えてきた。

ザックはこう説明する。「スラックは、もともとビジネス用のツールです。リアルタイムでチャットができて、複数のチャンネルを設けられます。ビジネスでの典型的な使い方としては、デザインチャンネルとか、マーケティングチャンネルなどを作って、チャンネルごとにコミュニケーションを取ることができます。僕たちは、似たような手法を、メンタルヘルスに適用しました」 このアイデアの種と、数千時間に及ぶ献身的な作業の結果、「18パーセント」というコミュニティが誕生したのだ。

「僕たちが作ったこのコミュニティには、うつ病や摂食障害などのチャンネルがありますが、メンバーたちがオモシロネタを投稿できる『ファニーズ』というチャンネルもあります。『私のささやかな勝利』というチャンネルでは、みんなが自分の成果を分かち合っています。『今日はリストカットをしなかった』、『ベッドから出ることができた』、『仕事が見つかった!』などの投稿が上がってきます。話題も実に様々です。現在、メンバーは八千人を超え、投稿は最近、百万通に達しました」

世話人会議を通じてオンラインコミュニティを効果的に管理する
メンバーが投稿を通じてサポートし合うオンラインコミュニティの運営には、手助けをしてくれるたくさんの仲間が必要になる。「18パーセント」も、素晴らしいチームの助けがあって可能になったということを、ザックはよく承知している。「18人の世話人(モデレーター)がいます」とザック。世話人は毎月の連絡会議を通して繋がっている。この会議は、ランドマークでザックが参加した類似の会議の構造を参考にして作られたのだ。


利用者たちは「18パーセント」を通して、簡単にサポートし合える。

「連絡会議に出たら、まず『今うまくいっていないことは何?』、と尋ねます。いつもその次に尋ねるのは、世話人たちがコミュニティのメンバーから何か特別なことをシェアされていないか、ということです。何千という投稿がアップされるので、他の世話人のところにどんなメッセージが届いているかを世話人の中で共有しておくのは、とても良いのです。連絡会議はこのコミュニティの成長や進化の持続のための手段だし、また、僕らが何か人に影響を与えられたとき、それを承認する場でもあります」


利用者たちは、大きな勝利も小さな勝利も分かち合うことができる。

「インターネットって、本当に奇妙ですよね。例えば誰かが、『このコミュニティがあったから私は自殺せずに済んだ』と書いてきます。この凄さが、なかなかピンとこない。でもよくよく考えてみると凄いことですよね。凄すぎてほとんど現実とは思えないくらいです。だってパソコン経由ですからね。でも、これは現実なのです。そこがまた特別なところですが。思えばシュールだなと感じることも時々ありますよ」

連絡会議はまた、世話人は決して絶海の孤島のような孤立した存在ではないという事実を、きちんと強調する助けになっている。世話人はより大きなグループの一部なのだ。これが、連絡会議の果たすもう一つの機能だ。それをみんなに思い出してもらうためにザックは言う。「世話人も、人にサポートを頼んでいいんだよ。世話人だからって無敵な訳じゃないんだから!」

18パーセントとクライシス・テキスト・ラインとの連携
ザックも、18パーセントの世話人たちも、全員ボランティアでやっているし、あらゆることを支援するのは無理だと分かっている。「僕らは決してセラピーの代わりではありません。むしろセラピーを補助するような役割です」。だからこそ「18パーセント」の発展にとっては、クライシス・テキスト・ライン*などの組織との連携づくりが極めて重要だ。

クライシス・テキスト・ライン 心理的危機にある人にテキストメッセージ(SMS 等)による相談を行う米国の非営利団体。米国内であればいつでもだれでも無料でサービスを利用することができる。

この連携があるので、誰かから「今、寂しい」というような、それほど緊急性のないメッセージが「クライシス・テキスト・ライン」に送られてきた場合、クライシス・テキスト・ラインはその人を「18パーセント」に誘導する。これによってクライシス・テキスト・ラインには、直ちに連絡する必要のある人々に対応する余裕が生まれる。ザックは、「気分が上がったり下がったりすることは誰にでもあります。18パーセントのゴールは、その人があまり落ち込み過ぎないうちに助けることです」。


クライシス・テキスト・ラインのような団体にとっては、連絡されたメンタルヘルスの問題が緊急でない場合は、その人を「18パーセント」に回せるので、助かるのだ。

逆に、世話人やコミュニティメンバーが、直ちに対処する必要のある投稿に遭遇した場合、緊急対応を必要とする人をクライシス・テキスト・ラインに紹介できる。クライシス・テキスト・ラインという頼れるパートナー資源があることを、みんなが知っている。「僕たちは、成長し続け、学び続けるための仕組みをいろいろと作り込んできたし、また、実際に人々の人生でどんなことが起きているかが反映されるような人の配置もしてきました」

ランドマークで学んだことを利用し、メディアを通じて啓蒙していく。
「自分には準備ができていないとか、こんなことをやろうなんて、自分を何様と思っているのか、というような会話にはまってしまうのは簡単です」とザックは言う。ザックはこれまで11年間ランドマークの会話に参加してきて、それが自身にも、結果的には18パーセントにも、どんな違いを作ってくれたのかに気づいている。

「僕は実際、18歳でブレークスルーテクノロジーコースに参加しました。先に兄が参加して、『ザックが参加したら、コースが終わったときには内気でなくなってるよ』と言いました。それで参加したのです。参加したら、『自分は内気な人間だ』という考えがたちまち消えてしまいました。それからアドバンスコースに参加して、ランドマークという場所を、自分を成長させるところ、できる最高に到達しようと務め、可能な限り自らを高めていくところだと見るようになりました」

そしてザックの場合、この「どこまで?」に対する答えは、単に内気でなくなった、を超えている。 ザックは、コメディアンの故ロビン・ウィリアムズの息子との質問セッションを主催した。 雑誌のピープル*1や、テレビのグッド・モーニング・アメリカ*2で「18パーセント」のトピックを採り上げてもらった。TEDxにも登壇した。「僕がTEDxに出るなんて、ありえないことだった。スライドなしでステージに上がって、台本なしに話す? 2,000人の前で13分間? とんでもないですよ。以前は人前で話すことが怖かったから。決してやらなかったでしょう。教室で前に出て発表するなんて、 僕はそういうことが大嫌いだったんですよ!」

1 「ピープル」 アメリカの有名雑誌
2 「グッド・モーニング・アメリカ」 アメリカABC放送の朝の情報番組

ザックは、生きる価値のある可能性を手に入れたので、それに情熱的に打ち込んでいる。
「僕が18パーセントをやっているのは、人を救いたいからです。最悪、上手くいかずに18パーセントを閉じることになるかもしれない。でも少なくともチャレンジはさせて欲しいんだ。だって、他には誰もこんなことやっていないのだから。僕が学んだことは、まさにそれだと思います。見物席で生きていきたいのか、それとも試合に出たいのか、ということ。僕は進み続けるしコミュニケーションし続ける。今までのどのプロジェクトでも、僕は常に人と分かち合い続けている。効果的なときもあればそうでないときもある。プロジェクトに失敗した経験は有り余るほど積んでいます。でも僕はそこから学んできたんですよ!」